2022年3月28日に、KGRIに参加する学生3名が集まり、「2040独立自尊プロジェクト」をテーマに座談会を行いました。所属や興味もバラバラで、「2040独立自尊プロジェクト」に参加していること以外はまったく共通点のなかった3人が集まるその場はまさに、異なる研究領域が融合するプロジェクトを象徴していました。そんな学生たち3人で、プロジェクトへの素直な印象や、今後への期待など自由に話し合っていきます!
記事制作スタッフ
文:高橋栞菜(慶應義塾大学法学部法律学科4年生)
写真:菅原康太(フォトグラファー)
編集:深沢慶太(編集者)
実施日/実施場所
2022年3月28日 CIC Tokyoにて実施
※所属・職位は2023年1月時点のものです。
松本有希菜(まつもと・ゆきな)
エコール・サントラル・パリと慶應義塾大学大学院理工学研究科のダブルディグリー。慶應義塾大学大学院理工学研究科を2021年9月に修了し、現在は戦略コンサルティングファームに勤務。2021年10月よりKGRIに参加。
髙橋栞菜(たかはし・かんな)
慶應義塾大学法学部法律学科4年生。山本龍彦研究会所属。高校生の時よりWebライターとしても活動中。2021年4月よりKGRIに参加。
伊庭知里(いば・ちさと)
慶應義塾大学医学部3年生。医学部先端医科学研究所 脳科学研究部門に所属。社会医学や公衆衛生に広く興味を持つ。2022年2月よりKGRIに参加。
バラバラな学生をつなげる共創の場
——本日集まったみなさんは、同じ慶應でも学ぶ分野は全然違いますよね。どんなきっかけでそれぞれその道に進まれたんですか。
松本:私は高校生の時、常に自分の意見を求められる文系科目が苦手だったんです。それに対して、数学ってニュートラルだなと思って。正解・不正解が必ずあるのが良くて、理系の道に進んだんです。まあでも、就職先は結局文系ですけど(笑)。最近では、みんなが違う意見を持っているなかで議論を進めていくのが、これまでと反対に面白いと思えてきたんです。
伊庭:私も高校生の時に理系科目が好きで、理工学部の生命情報系と医学部と迷って。最終的には、公衆衛生や健康格差なんかに興味があったので、医療系に進もうと医学部にしました。
髙橋:私は2人と違って、むしろ正解のない問題を考えたいタイプ(笑)。文系の中でも、社会の中の男女格差に興味があったから、法律で解決するために勉強したいなと思って法学部にしました。
——みなさんそれぞれ、興味も専門もバラバラですね。そんな3人の共通点が、全学部共創で取り組む「2040独立自尊プロジェクト」に参加されていること。
髙橋:はい。このプロジェクトは、普段の大学の授業だけでは学べない、他の学部の分野とも協力しながら関わることができるので、興味の幅を広げるための場所としてすごくいいなと思ってます。
伊庭:医学部では、医学知識を大量に覚える必要があるので、それが授業のほとんどのウェイトを占めているんです。もちろんそれも大事なことですが、結局医療は誰のためにあるかっていうと、分厚い教科書ではなくて、人、ひいては社会を相手に行うものなんですね。
だから、社会的な知識も同じくらいなければいけない。それにあたって、このプロジェクトのような横のつながりがあるプラットフォームがあれば、体系的にも学べるし人脈もできるので、すごく良いなと思っています。
松本:うんうん。私は、学生がいつでも出入りできるオープンな研究プロジェクトがあるっていうのが魅力だなと思ってる。
髙橋:私も、大学の研究プロジェクトって学生が気軽に出入りできるって印象がなかったんだけど、所長とお話ししたりして、本当にいろんな学生が訪れる居場所になってほしいと思っているんだって感じた。(※1)
それに、このプロジェクトは、研究分野を文系や理系に区切るんじゃなく、分野を横断して取り組むことで生まれるシナジーに期待してるのがいいなと思ってる。こういう挑戦を慶應が主導でやっていくことで、他の大学にも良い影響があるんじゃないかなあ。
(※1)【KGRI安井所長×学生インタビュー】「2040独立自尊プロジェクト」は慶應義塾をつなぐ大きな架け橋へ!
学生主導で2040年を変えていくために
――なるほど。このプロジェクトにみなさんが今後期待していることはありますか?
松本:それで言うと、まだ主立ったところでは法学部・理工学部・医学部が中心だから、もっと増えていって欲しいな。
伊庭:社会問題って、学部という枠組みで線引きできるものじゃないですからね。(※2)
髙橋:個人的には、人文科学系の分野が好きなので、もっと文学や芸術も関わるプロジェクトになったら面白そう。
松本:あとは、学生側がもっと主体的になっていく必要があると思うな。今は学生の関わる部分がこのプロジェクトの情報発信の部分が多いけど、2040年の課題に一番直面するのは、先生たちというより私たちの世代だから。
だから、私たちの意見をもっと議論の中に取り入れていけるように、自分たちも研究の場に参加していかなきゃいけないとは思ってます。情報発信の1個手前の段階に参加することで、研究に何かいいアイデアや解決策を提案できるんじゃないかなって。
髙橋:確かに。私は2021年の9月に法学部主催のシンポジウムをプロジェクトの一環として運営したんだけど、終わった後にシンポジウムの内容を踏まえて、学生たちで意見を言い合うアフタートーク会っていうプログラムを配信したんだよね(※3)。10人ぐらい学生が集まって、シンポジウムの内容に対して自分たちではどう思ってるかとか、今後の世界はどうなっていくかみたいなことを話して。
その時に、シンポジウムの中では出なかったような視点の話が盛り上がったりして、やっぱり教授だけじゃなくて学生の意見を言い合える場が必要だなって感じた。世代間の相互の意見を互いに教え合って学び合うのは、このプロジェクトをやる上では大事な視点だよね。
(※3)(KGRI公式サイト)【開催報告】シンポジウム「デジタル社会における『新聞』とは何か」② アフターセッション(学生討論)開催レポート
松本:もっと学生を増やしていく必要があるのが今後の課題かな。プロジェクトに入ってやりたいことがある人はもちろん、何をやりたいかわからない人にとっても、いろんな学生や教授がいるから刺激を受けて新しいことに挑戦したくなるいい場だと思う。
髙橋:「入ったらこの日は行かないと」とか、「この授業をとらないといけない」みたいなこともないし、ただ単純に「面白そうだな」って気持ちで来てみてほしい。
大学になると、意外とゼミに入る以外で教授と話すことって少ないんだよね。その点、このプロジェクトだとたくさんの教授たちと交流することができるのが楽しいかな。先生というより、身近にいる面白い大人って感じで話せるから、何か教えてもらうみたいな関係じゃなくって、面白い人たちに会ってみたいなって思う人には結構いいと思います。
伊庭:そうですね。立場に関係なく、似たようなモチベーションを持った人が集まってること自体が楽しくて、意味のあることだと思います。
それに医学部は、どうしても人数は少ないし他の学部の教授に教わることも少ないので、コミュニティが狭くなりがちなんです。でも、外の世界には本当にすごい素敵なことを考えてる人がたくさんいる。だからこのプロジェクトとかで外の人と話す機会を作って、いろいろ考えてくれる学生が増えたらいいなと思いますし、私はもっと考えていかなきゃいけないなと思います。
2040年の社会を支える学生側の視点から、今後のプロジェクトについて語り合ったこの座談会。単なる感想に終わらず、「もっとこうなって欲しい!」と議論も白熱し、学生側からも主体的にこのプロジェクトを動かしていきたいという熱い思いが育まれつつあることを感じる会でした。
今後も、ここで語り合った「学生主体でプロジェクトを発展していく」ことを目標に、さまざまなイベントや発信などを進めていきますので、ご注目ください!