みなさん、「2040年問題」という言葉を耳にしたことがありますか? 最近、身近なところでご高齢の方が増えてきた、と感じることはありませんか?
2040年、日本は世界に類を見ない超高齢社会を迎え、それに伴いさまざまな社会問題が起きると予想されています。一方、高齢者が年を重ねても元気で自立した生活を維持することができたらどうでしょう。この問題の解決の糸口が見つかるかもしれません。
2022年10月20日、KGRI「2040独立自尊プロジェクト」主催のシンポジウム「健康は誰の手に渡るのか:グローバル高齢化の観点をふまえて」がオンラインで開催されました。
2040年の日本における労働人口の減少、社会保障費の増大、そのほか社会問題の深刻化を軽減するために、健康寿命の延伸に向けて多分野横断型で取り組むKGRIの活動紹介と、各界でご活躍される先生方の講演。その模様を、学生の目線からレポートします。
2040年に向けて、私たち学生にできることがあるだろうか。ぜひこれを機会に、一緒に考えてみませんか。
イベント名
KGRI「健康寿命延伸プロジェクト」シンポジウム
「健康は誰の手に渡るのか:グローバル高齢化の観点をふまえて」
(イベント内容詳細はこちらをご覧ください)
実施日/実施方法
2022年10月20日 オンラインにて実施
記事制作スタッフ
文:平山優花(専修大学人間科学部心理学科3年生)
Top画像:シンポジウムの予告と同一
※所属・職位は2022年8月時点のものです。
平山優花(ひらやま・ゆか)
専修大学人間科学部心理学科3年。
医療や福祉の分野の課題解決に研究を通じて貢献していくことに関心があり、大学では、認知神経科学・生理心理学分野のゼミで学んでいる。研究を社会実装に繋げていく過程を学ぶ機会を持ちたいと考え、本コミュニティに参加。
「健康は誰の手に渡るのか:グローバル高齢化の観点をふまえて」を聴講した経験から学んだこと
バイアスを自覚すること
千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門教授の近藤克則先生は、社会のどんな要因がどのように私たちの健康に影響するのかについてお話しされ、自分は健康格差の課題にどのように貢献できるだろうかと考えながら聴講した。
講演の中で、特に印象に残ったのは、経済的な状況や教育年数の違いが、どのようなコミュニティに参加しやすいと感じるかに影響を与えているのではないかということだった。今後、ある属性の人はあるコミュニティに参加しやすい/参加しづらいという傾向を実証することに留まらず、経済的困窮によって、どのような対人関係への認識や社会参加への姿勢の変化が生じるのか、それはどのような過程を経て起こるのかを明らかにすることができれば、経済的困窮という状況から受ける、認知・心理学的影響や身体的な影響を最小限に抑える介入を検討することができるようになるのではないかと思った。また、ボランティアなどの何かしらの役割を持ってコミュニティや社会に参加することが、健康に良い影響を与えているということは一般的に想像しやすい現象ではあるものの、そこに対して、各個人の経済的な背景の違いが考慮されているのかという批判的な視点を持って検討したことがなかったので、とても学びになった。自分が社会の母集団としてどのような社会・経済的な属性の人を想像しやすいのかというバイアスを自覚し、相対化しながら考えることを意識して、今後の研究や活動に取り組んでいきたいと思った。また、シェフィールド大学健康寿命研究所のDaniel Holman(ダニエル・ホルマン)先生の近藤先生へのコメントを聞き、健康格差への介入や健康の社会経済的要因を検討することの重要性は、国境を越えて課題となっている論点なのだと改めて実感した。
健康や格差といったテーマは、各個人のそれまでの人生で感じてきたことや経験してきたことによって、そこからイメージされるものが大きく影響を受けやすい領域だと感じる。だからこそ、多くの人が当たり前だと感じていることをそのまま鵜呑みにするのではなく、本当にそうなのか、他の要因はないのかを丁寧に検証していくことが重要なのだと思った。
個人への視点と社会全体への視点
私は将来、研究の視点を持った公認心理師として国内外の医療や福祉の課題解決の分野に貢献したいと考えている。今回のシンポジウムでテーマとなった健康格差にどのように向き合うかという視点は、今後、医療のどの側面に関わることになっても自分にとってとても重要なテーマになると思った。目の前の患者さんの置かれている個別の状況を把握し、科学的な妥当性とその人にとっての価値を踏まえて適切な支援を実践すること、また、個人への視点から一歩引いて社会全体を見渡した時に、長い人生を通して人が健康に生きていくためにはどのような仕組みや介入が必要かを考え、多くの人と共に実装すること、その双方の視点を両立しながら研究や仕事を続けていける力を、残りの学生生活でより深く身につけていきたい。