はじめまして、慶應義塾大学商学部3年の宮田拓弥と申します。
私は大学では経営学やマーケティング、社会学を学び、課外活動では「2040独立自尊プロジェクト」のイベントに参加するほか、自身で立ち上げた映像制作系の学生団体「ツナグ-TSUNAGU-」の代表を務め、映画制作や脚本・小説執筆をしています。
2022年は私にとって大変意味のある1年になりました。「2040独立自尊プロジェクト」をきっかけに株式会社コーセーの皆様と出会い、「ツナグ-TSUNAGU-」にご協賛いただいた結果、1本の映像作品を完成させることができました。
私がどのような想いで「2040独立自尊プロジェクト」に関心を抱き、手を挙げたいと考えたのか。アートやクリエイティブの切り口から、答えのない「2040年問題」解決への糸口を見出せるだろうか。「ツナグ-TSUNAGU-」を創設してから約1年の間、私が考え続けてきた創作活動のビジョンについてお届けします。
本稿が学生や企業、研究者のみなさんとともに、新たな活動の可能性について考えるきっかけになれば嬉しいです。
宮田拓弥(みやた・たくや)
慶應義塾大学商学部3年生。学生団体「ツナグ-TSUNAGU-」代表。文学部人文社会学科社会学専攻 岡田あおい研究会所属。経営学やマーケティング、社会学やアートなど幅広い分野に興味を持つ。2022年5月より「2040コミュニティ」に参加。
ツナグ-TSUNAGU-
「多くの学生に活躍の機会を。」を掲げ、映像制作を中心に活動するクリエイティブ集団。2022年創設。
慶應義塾大学、早稲田大学、日本大学芸術学部の学生が中心となり、“企業×学生マーケティング×学生クリエイター”によって、企業には格安でクオリティの高い映像を、クリエイターやマーケターを目指す学生には知名度向上と活躍の場所を提供するなど、自主制作にとどまらない活動を行う。
映像制作を中心に事業展開する株式会社ハイブリッドファクトリーと提携し、学生クリエイターの派遣事業も行う。番組制作や「PIVOT」「Yahoo Japan!」などの映像メディアや広告映像の制作に多くのメンバーが携わっており、日々撮影や編集のスキルを磨いている。
公式サイト:https://tsunagu-official.studio.site
※所属・職位は2023年5月時点のものです。
学生の創造性で未来を拓きたい
ヒントを求めて「2040コミュニティ」へ
私は物心ついた頃から人よりも創作欲がありました。小説や映画が大好きで、自分でも書いてみようと手を動かしてみるもくすぶる日々。私の周りには同じように物書きをする人、演じる人、映像を撮る人がたくさんいますが、彼らの才能は息吹をあげようともさまざまな障壁を乗り越えられずに散っていくことが多い現状です。
多くの人に見てもらえる、感動させられるような作品を作りたいと願う彼らがなぜビジネスの領域に目を向けようとしないのか、私は不思議でした。この社会が資本主義経済のもとに成り立っている以上、作品が多くの人の目にとまり感動を引き起こすためには作品が売れることが不可欠です。誰にも売れない作品が、多くの人の心を動かすことはできるはずがないのです。
未だ日の目を見ない彼らやその作品たちを社会実装し、学生のうちから自分のやりたいことが叶えられるキャリアを描けるように、そんな想いで「ツナグ-TSUNSGU-」を創設しました。芸大・美大に所属するクリエイターとマーケティングなどを学ぶ学生が共創しています。
一方で、「誰もが独立自尊——自分らしい生き方を叶えられる社会の実現」に期待して、私は「2040独立自尊プロジェクト」のイベントに参加するようになりました。さまざまな方のトークやピッチを聞くうちに、理系分野を中心に議論が展開していくケースの多い本プロジェクトにおいて、私たちのようなクリエイターや文筆活動を行う学生、文系分野を専攻する人々がどのように自己実現し、社会に貢献することができるのかと思案するようになりました。
そんな中、CIC Tokyoにて行われた「2040コミュニティ」のイベント内で株式会社コーセーの皆様と出会いました。「美しい知恵 人へ、地球へ。」を掲げ、美の観点から「誰もが自由に志向できるようなウェルビーイング」の実現を目指されている姿勢に感銘を受け(※1)、私たちのプロジェクトとの協働をご提案しました。その結果として、こちらの映像作品が完成したというわけです。
(※1)参考記事:「【5/31開催レポート③】「2040コミュニティ」キックオフ(後編)」
2040コミュニティをきっかけに
「FASIO」×学生クリエイターの映像作品が完成
「FASIO(ファシオ)」は、等身大の「わたしらしさ」をコンセプトに掲げるコーセーのメイクアップブランド。
私たちは、「FASIO」のパーマネントカールマスカラを題材に、今の大学生世代が考える「わたしらしさ」を表現した映像作品を制作することになりました。脚本を制作するにあたっては、コーセーの方々と綿密なコミュニケーションを重ねました。どのような構図を使えば、ブランドの世界観や未来につながるビジョンを自分たちの手で表現できるのか。そもそも「わたしらしさ」とはどういうことだろうか——。
幾度とない話し合いのすえ、ジェンダーや既存の美しさにとらわれない観点から、マスカラというツールの使用シーンを6人の若者の実生活に落とし込みました。
さらに、商品のコモディティ化が進む中、消費者の個性化志向をターゲットに絞るマーケティングトレンドや、「FASIO」のキャッチコピー「なじむ、らしさ、つづく。」をもとに、今を生きる私たちが日常生活の中で大切にしたい「ありのままの自分」を表現しました。
また、メンズメイクのトレンドを上手く取り入れることを重視しました。本映像では、勇気を持ってメイクに踏み出した男子が夜中に独り家で鏡に向かってマスカラを練習する様子を男性化粧行動の一つの形として表現しています。
誰もがありのままに生きられる
未来のためにアートができること
一般に1分の映像を作るのに、丸一日かかると言われています。1本の映画や映像作品を作るのには、莫大なお金と時間がかかるのです。これを学生たちの自己資金で賄うのには限界があります。
表現したいものがある、伝えたいメッセージがある、可能性を秘めた才能の伸びしろだってある、にもかかわらず資金集めの手段が限られていること、その想いを将来のキャリアにつなげることの難しさなど、さまざまなハードルが学生クリエイターの前に立ちはだかっているのです。
しかし、私たちは考えます。アートやクリエイティブには、この先の社会をよりよくしていくための発想という力があるはずだ、と。現に、先行きの見えない時代だからこそ、これまでの社会やビジネスのあり方を変革したいと考える人たちの間で、アートに対する注目が高まっています。
だとしたらその力を、「2040 年問題」というまだ答えのない難問に挑む「2040 独立自尊プロジェクト」のために役立てることができるのではないか。さまざまな研究と、何ものにもとらわれない表現者の発想や意欲を掛け合わせることで視野を広げ、新たなビジョンを導くことができるのではないか——。
2040コミュニティという場で、誰もがありのままに輝くことのできる社会の実現を掲げるコーセーの考え方に共感し、そのために取り組む方々との貴重な出会いに恵まれたこと。率直な意見や想いを交わしていく中で、一つの映像作品が生まれたこと。
しかし、これはまだ始まりにすぎません。この作品をきっかけに、あらゆる人が自分なりの美や創造性を発揮し、よりよい未来を導くための対話を広げていきたい。それが、私の願いです。
【結び】
みなさんへのメッセージ
私は、アートやクリエイティブの力が社会や企業、多くの人々の人生を救うことができると本気で信じています。ではそのために、何ができるのか。
その答えを探るために、私は「ツナグ-TSUNAGU-」を創設しました。このビジョンに共感し、共創してくださる学生や企業を募集しています。そして何よりも、今を生きる一人ひとりの創造性や多様な専門性を掛け合わせ、よりよい未来へと続く道筋と可能性を広げていきたいです。
「2040独立自尊プロジェクト」に集った学生、研究者、企業のみなさん、ぜひ私たちと一緒に考えてみませんか。そして、少しでも良い未来の実現に向けてともに歩んでいきましょう!