2040年の “未来逆転” に向けて、着々と準備を進めてきた「2040コミュニティ」( 2040独立自尊プロジェクトコミュニティ)。その始動を告げるキックオフイベント(※1)を目前に控え、完全オンラインにて未来発想ワークショップが実施されました。
この4〜5月にかけてイノベーション拠点「CIC Tokyo」で開催されてきたコミュニティワークショップと研究者ピッチ(※2、3)を経て、コミュニティの発進シークエンスはいよいよ最終段階。
「強制新結合」をテーマに掲げ、キックオフ目がけて発動された “最後の一押し”。果たしてその秘策とは? 学生に研究者、有志企業の方々が力を合わせ、短時間集中で行われたワークショップの模様をダイジェストでレポートします。
(※1) 【告知】5/31開催「2040コミュニティ」キックオフイベント
(※2) 【4/26開催レポート】“未来の逆転” がここから始まる!? 「2040コミュニティ」ワークショップ
(※3) 【5/16開催レポート】「2040コミュニティ」の底力! 研究者ピッチ会
イベント名
2040独立自尊プロジェクト「強制新結合ワークショップ」
実施日/実施方法
2022年5月24日 オンラインにて実施
記事制作スタッフ
文:深沢慶太(編集者/IMPACTISM記事編集ディレクター)
【実験的ワークショップ】
多様な人々の“新結合”で何が起きる?
この日のワークショップは1時間。限られた時間に加え、コミュニケーションに制約のあるオンラインイベントで、いったいどんな “新結合” を起こしていこうというのか? 画面越しながら、謎に包まれた雰囲気が漂います。
冒頭にはKGRI特任教授にして、スタートアップ企業アークレブの共同創業者でもある浅井誠さんが登場。「多様性を活かしてイノベーションが起きていくような設計をするためには、まずはどんな人がいるかを知り、仲間を見つけることが大切」と語ります。
続いて、慶應義塾大学大学院理工学研究科特任講師の今城哉裕さんからワークショップについて説明が。「2040年問題は未来を揺るがす大問題。多様な人々による新結合=イノベーションを目指す上で、まったく分野の違う人たちだけに相互理解が欠かせない」とのこと。
その実験として、参加者全員を小グループに分け、一人ひとりのポテンシャルを “無理やり” 新結合させようというのです。
【ディスカッション報告】
「老いなき社会」をめぐる発想の冒険
グループ編成は全部で3組。Zoom上でグループごとの「ブレイクアウトルーム」に分かれ、ウォーミングアップを行います。
私が参加したのはグループ2。メンバーは大学生に研究者、なかには企業の地方拠点からの参加者まで。専門分野や興味領域も「やわらかエレクトロニクス」「まちづくり」「アート&デザイン」「スタートアップ支援」etc.。この顔ぶれのコラボレーションで、まずは「だれも孤立させない社会」をどう実現するか考えてみる。制限時間は15分です。
全員で発想を巡らせるなかで、東京大学生産技術研究所准教授の松久直司さんが研究する「柔らかいウェアラブルデバイス」と、慶應義塾大学大学院理工学研究科の菖蒲健太さんが取り組む神経細胞内の情報伝達シミュレーション、セイコーエプソン株式会社技術開発本部分析CAEセンター部長の加藤治郎さんが携わるMEMS(微小電気機械システム)の加工技術を組み合わせ、「柔らかく、装着していることを忘れるほど小さいデバイスで神経伝達を促進し、人々の共感力を高める」というアイデアが生まれました。
しかし、これはほんの小手調べ。同じ要領で、本日のメインとなる課題2「老いなき社会」を考えていきます。制限時間は20分。以下はそのディスカッションからの抜粋です。
「まずは “老いとは何か” から考えよう」と松久さん。みんなで考えを巡らせるなか、意識をコンピューターと接続すれば、メタバース上では若いままの自分を維持できる。でもそれは問題の解決といえるのかという、過激な意見も飛び出します。
ここで「100歳以上に寿命が伸びていくとして、ただ長生きすることが幸せなのか。心が幸せであること、ウェルビーイングが重要だと思う」と語ったのは、三菱地所株式会社横浜支店 みなとみらい21開発・エリアマネジメントユニットの瀬戸川麻結さん。CIC Tokyoでライフサイエンス分野のスタートアップ支援を担当する加々美綾乃さんも、「体が老いなくなったとしても、心が老いることが問題ですね」と指摘しました。
ここでビジョンがぐっと深まり、慶應義塾大学経済学部の奧埜豪さんは「ネガティブな精神状態を感知して周りの人が声を掛けられるデバイスはどうか」。私も「アフォーダンスのように街や環境から自然に働きかける仕組みがほしい」と発言。
そこから発展して、「“老いなき社会” というテーマ設定から見直したい」という掟破りの発想も。ファシリテーターを務めたCICI Tokyoゼネラル・マネージャーの名倉勝さんが研究していた核融合工学からの連想で、「核融合が実現すれば物理的な問題はかなり解決できる。だとすれば重要なのはやはり心」という結論が固まりました。
【課題発表】 20分の創発成果
“異分野×新結合”の可能性やいかに
続いては3グループが一つの画面に再び集まり、それぞれが考えた「老いなき社会」の解決案を発表します。
グループ1の提案は「現実的な刺激を与えてくれるヴァーチャルシティ」。ヴァーチャル上の体験精度を高めていくことで、現実世界の外出や交流の楽しさを家にいながら体験できるようにする。そうすることで、これまでの物理的な制約を超えてより多様な人が集まるようになり、もっと楽しい社会を実現できるのではないだろうか。
グループ2は、「老いなき社会」というテーマを「飽きのこない社会と強制新結合」に書き換え、「生体情報を使って街から人にアプローチするなど、強制的に刺激がある社会」を提案。心の若さを保つには、個人レベルでは限界がある。光を発してセロトニンを分泌させるなど、好奇心を持続させる仕組みを環境側に実装してはどうか。
グループ3からは「飴と鞭で歩かせる」と「ソフトロボットBMI」。老いなき社会の実現には、誰もが外出したいと思えて、歩き続けられる空間の設計が大事。と同時に、脳と機械をつなぐBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)と負担なく装着できるソフトロボット(柔らかい材質のロボット)を活用し、高齢者の歩行をサポートする提案です。
最後に全員で、最も良かったと思う提案に投票。今回はグループ2が最も多くの票を獲得しましたが、グループ1、3とも見据えているところは同じ。お互いの案をさらに掛け合わせていくことで、予想も付かないような展開につながるはず……!
そんな気運を共有しつつ、ワークショップは終了となりました。
【まとめ&感想】 期待よし!
コミュニティ発進の準備完了
たった1時間の実施ながらも、飛び交った情報の密度は相当なもの。それもそのはず、この日集ったのは人工知能や脳科学、月面探査機の研究者、企業のエンジニアやウェルビーイング施策担当者、アナウンサー、フレッシュな感性が冴えわたる学生まで。これだけの頭脳が一堂に会し、一つのテーマに向けてアイデアを膨らまし合っていったのですから、その集束感たるや並大抵ではありません。
しかもこれはオンライン。五感のうち視覚と聴覚に知覚情報を絞った条件下でも、これだけの結合が発生したのです。これをリアルなコミュニティで実践していけば、「2040年問題」にも必ずや、危機的予測を根本からひっくり返すインパクトをもたらすことができるはず。
これぞまさに、「2040コミュニティ」最大の特徴といえる集合知の強み。一人ひとりのリソースを掛け合わせたクラスター型 “集合知エンジン” の出力で、一気呵成に未来へ進む。
さあ準備は整った。きたるべき発進の日に向けて、胸が高鳴るばかりです!
【告知情報】
こうしたワークショップや研究者ピッチの試みを経て、5/31に「2040コミュニティ」の本格始動を告げるキックオフイベントが開催されました。
その模様を追ってレポートしていきます。
【告知】5/31開催「2040コミュニティ」キックオフイベント(Peatixへ)